野球のカーブボールは何故曲がるのでしょうか。ボールが回転せずに飛んでいる場合、ボールから見た周りの空気の流れは、図1.2(a)のようになります。空気の流れが理想的な流体であるとみなせるとして、ボールには重力などの外力が加わらないとすれば、ボールはまっすぐ飛んでいくことになります。実際の空気中を飛んでいくボールには、複雑な外力が加わることになり、ナックルボールやフォークボールのような軌跡を描くことになりますが、このような複雑な流体に関することは、ここでは無視することにしましょう。
飛んでいない状態で、その場で自転しているようなボールの周りの空気は、ボールとの抵抗により、ボールの回転に引きずられて回転することになります。図1.2(b)
ボールは周りの空気を運動させることによって、エネルギーを失っていきます。具体的には、ボールの回転速度は徐々に低下していくことになります。周りの空気は、ボールの回転エネルギーを使って、回転させられることに注意してください。逆に言えば、このボールと空気の間に抵抗がない場合は、周りの空気を回転させることはできません。
この図1.2(a)と図1.2(b)の流れを重ね合わせたものが図1.2(c)になります。回転しながら飛んでいるボールは、この力Fによって、曲がることになります。このような力の効果は、飛行機の翼の揚力と基本的に同じものです。
カンのいい人であれば、どうして私が野球のカーブボールの運動などという一見関係ない現象を持ち出したのかお分かりでしょう。コマの運動と野球のカーブボールの運動はとてもよく似ているのです。もう一度コマの運動を考えてみてください。「コマの歳差運動は、地球重力場とコマによる回転重力場の重ね合わせの効果によるのではないのか。」 次には、重力を制御するということとはどういうことなのかを考えることにしましょう。